長引く子どもの咳…百日咳かも?気になる症状を簡単チェック
子どもの咳が長引いているなと感じたら、それは「百日咳」かも――。
2024年から、全国で百日咳が流行しています。百日咳は特徴的な症状と経過の3つの段階があり、感染のしやすさも時期によって変わってきます。感染症に詳しい保健師の監修のもと、特に気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。
<この記事でわかること>
- 百日咳の主な症状
- 注意したい年齢や流行時期
- 効果的な予防法と治療法
- 登園の目安
気になる咳が続くときは、早めの受診を心がけましょう。感染予防対策をしっかりして、大切なお子さんを守りましょう。
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百日咳の症状は?チェックリストで確認しよう
こんな咳に要注意!
以下に当てはまるときは、百日咳を疑いましょう。
- 激しく「コンコン」と咳き込み、息を吸う時に「ヒュー」と笛のような音が出る
- 発熱することは少ない
- 咳が長く続いている
- 咳とともに嘔吐することがある
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百日咳の特徴
子どもを中心に広がっている百日咳(ひゃくにちせき/ひゃくにちぜき)は、コンコンと連続して激しく咳き込んだ後、息を吸うときにヒューと笛を吹くような音が出る咳を繰り返すのが特徴です。この呼吸器感染症は「百日咳菌(ボルデテラ・パータシス菌)」という細菌によって引き起こされ、咳が出る期間が2〜3か月(約100日)ほどあることから「百日咳」と呼ばれています。
百日咳の経過は“3期”に分かれる
1. カタル期:約2週間
風邪症状から始まり、次第に咳の回数が増えて激しくなります。この時期がもっとも感染力が強いといわれています。
2. 痙咳期(けいがいき):約2〜3週間
特徴的な「コンコン」「ヒュー」という発作性けいれん性の咳(痙咳)が出現するのがこの時期。夜間の発作が多いですが、年齢が小さいほど症状はさまざまです。
乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ(顔色や唇の色や爪の色が紫色になること)、けいれん、呼吸停止と進展することがあります。合併症としては肺炎や脳症などもあり、乳児では特に注意が必要です。
百日咳の感染がみられる年齢
百日咳はいずれの年齢でも感染します。
特に注意が必要なのは、母親からの免疫が不十分な新生児期や乳児期早期。乳児の場合、呼吸ができなくなる無呼吸発作が起こるなど重篤になることがあり、特に生後6か月未満では命にかかわることもあります。
また、学童期の子どもや成人でも感染が報告されています。これは、予防接種(五種混合ワクチン)から時間が経つと百日咳に対する効果が低下するためといわれています。百日咳の流行状況
百日咳は1年を通して発生する感染症ですが、特に春から夏までに流行がみられます。国立健康危機管理研究機構によると、2024年から徐々に患者が増加しており、2025年も増加傾向が続いています。
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百日咳に感染したらどうする?
百日咳の診断・治療法
乳幼児の百日咳の診断は、咳の経過や症状の特徴から総合的に判断されることが多いです。 確定診断には、医療機関での血液検査、培養検査、遺伝子検査などが用いられます。
- 新生児の治療法
副作用のリスクがあることから、抗菌薬以外の薬が検討されます。また、咳が激しい場合には対症療法が行われることがあります。 - 生後6か月以上の子どもの治療法
抗菌薬による治療が行われます。 - 大人の治療法
抗菌薬による治療が行われます。
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百日咳にかからないための対策や予防法は?
予防接種
百日咳の予防には、五種混合ワクチンの接種が有効です。生後2か月から予防接種法に基づく定期接種を受けることができるので、計画的に接種しましょう。
小学校就学前の追加接種
定期接種により百日咳の免疫を得ていても、小学校就学前にワクチン効果が薄まることが分かっています。そのため、日本小児科学会では、任意での三種混合ワクチンの追加接種を推奨しています。追加接種することにより、百日咳の感染リスクを減らし、学童期以降の免疫維持に役立つと言われています。
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ワクチン未接種の新生児期や乳児期早期の対策は?
母親からの免疫が不十分で、ワクチンを接種することができない赤ちゃんへの感染を防ぐには、周囲の大人が感染症対策を徹底する必要があります。百日咳の主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染、手指を介して感染する接触感染なので、赤ちゃんと接する際は特に流水と石けんで十分に手を洗い、うがいなどの基本的な感染症対策をしっかり行いましょう。
百日咳で保育園や幼稚園を休む期間は?
百日咳と診断された場合、保育園・幼稚園・学校は「出席停止」扱いになります(学校保健安全法第19条)。登園の目安は「特有な咳が消失していること又は5日間の適正な抗菌薬による治療が終了していること」です。
また、百日咳に感染すると、医師が記載した登園許可証などを求められるケースもあります。園によって方針が異なりますので、事前に確認しましょう。
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妊娠中に百日咳はうつる?胎児への影響は?
大人も百日咳に感染する
百日咳は、大人にも感染する可能性があります。しかし、子どもに見られるような激しい咳の発作が出ないことが多く、咳が自然におさまるケースも少なくありません。そのため、自覚がないまま乳児などワクチン未接種の子どもへ感染を広げてしまうことが問題となっています。
百日咳菌が胎児に直接感染することはない
妊婦さんが百日咳に感染しても、百日咳菌は胎児に直接感染しないとされています。
ただし、妊婦さんが長期間にわたって咳き込むことで、胎児に間接的な影響を及ぼす可能性が考えられます。さらに、出産後に母親がまだ感染している状態の場合、生まれたばかりの赤ちゃんへうつしてしまう可能性があるため、妊娠中に咳が続く場合は早めに医師へ相談し、適切な治療を受けることが重要です。
妊娠中に百日咳ワクチンを接種できる?
日本ではまだ普及していない
妊娠中でも接種可能な百日咳ワクチンがありますが、日本では妊婦さんへの接種がまだ一般的ではありません。
オーストラリアや欧米諸国では、妊娠27週〜36週の妊婦にTdap(成人用三種混合ワクチン)を接種し、母体から胎児へ抗体を移行させることで、生後すぐの赤ちゃんを百日咳から守る方法が広く取り入れられています。
ではなぜ、日本では妊娠中の百日咳ワクチン接種が進んでいないのでしょうか。
- 「Tdap」の認可・販売がされていないから
諸外国で一般的な「Tdap(成人用三種混合ワクチン)」の妊婦への接種は、副反応発生時の対応など課題が多いことから、日本では認められていません。 - 日本の接種可能ワクチンでは乳児の重症化予防効果が証明されていないから
日本でも、百日咳含有ワクチンの「三種混合ワクチンDTaP(トリビック®)」であれば、妊娠中に接種することができます。しかし、「妊婦への安全性」と「乳児への抗体移行」は確認されているものの、「乳児の百日咳の重症化予防効果」は十分なデータが揃っていないとされ、まだ普及には至っていない状況です。
予防接種を希望する場合は?
「三種混合ワクチンDTaP(トリビック®)」であれば、妊婦さんでも任意で接種することができます。また、「Tdap(成人用三種混合ワクチン)」は、輸入ワクチンを扱う医療機関で接種することができます。地域の流行状況や家庭内の感染リスクを踏まえたうえで、ワクチン接種を希望する場合は、産科のかかりつけ医によく相談し検討しましょう。
最後に・・・
百日咳の予防には、子どもの場合は予防接種が最も有効です。子どもが咳をし始めて、特に「コンコン」「ヒュー」という独特の音に気付いたら、早めに医療機関を受診しましょう。
大人の場合、子どもに見られるような激しい咳の発作が出ないことが多く、咳が自然におさまるケースも少なくありません。受診・診断が遅れ、ワクチン未接種の乳児へ感染させる可能性があるので、長引く咳がある場合は注意しましょう。
百日咳の主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染、手指を介して感染する接触感染です。流水と石けんで十分に手を洗い、うがいなどの基本的な感染症対策をしっかり行ってくださいね。