スポドリと経口補水液どっちがいい?子どもの発熱や下痢時の使い分け
子どもが発熱したときや、たくさん汗をかいたとき、胃腸炎のときなど、まず気になるのが「水分補給」ではないでしょうか。
手軽なスポーツドリンクや、「予防のために」と経口補水液を選ぶ場合もあるかもしれませんが、目的や成分が異なるため、使い分けが大切です。
この記事では、スポーツドリンクと経口補水液の違いや、それぞれが適している症状やシーン別の使い分けを、保健師監修のもと、わかりやすく解説します。「どちらを飲ませればいいのか分からない」と迷ったときに判断できるよう、基礎知識を身につけておきましょう。
この記事でわかること
- 子どもの症状やシーン別の使い分け
- スポーツドリンクと経口補水液の違いや特徴
- 飲ませるときの注意点
- 家庭に常備する際のポイント
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この記事を監修いただいた専門家
保健師 シホ
10年以上にわたり自治体保健師として感染症や母子保健などの業務に従事し、多くの住民に寄り添い支援を行う。他にも、病院看護師としての臨床経験や学校保健師としての業務経験など、幅広く公衆衛生に従事する経験を持つ。現在、一人娘を育てながら、ICTを使ってより多くの人々の健康支援に寄与できるよう、育児コラムの編集・監修などにも活動を広げている。趣味は映画鑑賞。
スポーツドリンクと経口補水液|症状やシーン別に使い分けよう
スポーツドリンクと経口補水液(けいこうほすいえき)は、どちらも水分と電解質を補う飲み物です。 しかし、使うべきタイミングや症状によって適しているものが異なり、飲み方を間違えると健康を害する可能性も出てくるので、注意が必要です。
ここでは、家庭でよくあるシーン別に、どれを選べばよいかをまとめました。シーン別 水分補給の種類
発熱
軽い熱や体調不良、食欲あり
スポーツドリンクは水分とエネルギーを補給できるが、飲み過ぎると糖分過多になるため注意。水、麦茶でもよい。
食欲がなく脱水が疑われる
経口補水液は少量から様子を見ながら与える。または、水、麦茶でもよい。
熱が高く、ぐったりしている。食事(水分)が摂れない
飲めるものを優先して少量ずつ与える。 水分がほとんど摂れない場合は医療機関を受診する。
熱中症
目立った症状なし(予防)
水、麦茶またはスポーツドリンクを量と濃度を調整して与える。熱中症の予防で経口補水液は与えない。
のどの渇き、めまい、立ちくらみ、こむら返り(筋肉のけいれん)、大量の発汗など
冷やして飲むと体温を下げる効果も。こまめに少量ずつ与える。誰かが付き添って見守り、良くならない場合は医療機関を受診する。
頭痛、嘔吐、ぐったりしているなど
常温で少量ずつ与える。状況によっては点滴治療が必要。すみやかに医療機関を受診する。
意識障害など、飲水が困難 救急車を呼びましょう。受診までの間は体を冷やして涼しい場所で待つ。呼びかけへの反応が悪い場合には無理に水分を与えない。
感染性胃腸炎
下痢・嘔吐・発熱
嘔吐後は少し時間を空けてスプーン1杯ずつ与える。 早めに医療機関を受診する。
運動後や日常
症状なし
水分補給の基本は水・麦茶。スポーツドリンクは量と濃度を調整して与える。
表のダウンロードはこちら- スポドリと経口補水液、子どもに飲ませるならどっち?
- 子どもに飲ませるならスポーツドリンクと経口補水液、どっち?シーン別の一覧表を「ダウンロードする」からGETしてください♪
熱中症の「予防」として経口補水液は飲まない!
経口補水液のことを、「スポーツドリンクより効き目があるもの」「スポーツドリンクの上位互換」のように思っている方も多いかもしれません。しかし、経口補水液は、脱水症の治療に用いる、病気になった人のための飲み物です。
「汗をたくさんかいたから念のため飲んでおこう」「熱中症になりそうだから飲もう」などの、予防としては飲まないようにしましょう。間違った飲み方をすると、血圧や心臓に負荷がかかってしまうこともあります。あわせて読みたい- 子どもの胃腸炎④何を食べさせる?適した飲みものや食べもの、タイミングを解説【保健師監修】
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スポーツドリンクと経口補水液の違いと特徴
子どもの体調が悪いときによく用いられる「スポーツドリンク」と「経口補水液」の違いを、成分や目的の面から見て見ましょう。
項目 スポーツドリンク 経口補水液 ナトリウム・カリウム 少なめ 多め 糖分 多め(甘い) 控えめ 吸収スピード 普通 早い 主な目的 水分+エネルギー補給 脱水症の改善 飲みやすさ 飲みやすい 飲みにくいこともある
スポーツドリンクとは?
スポーツドリンクは、その名のとおり運動などによる発汗で体から失われた水分や電解質を補うために作られた飲料です。糖分(ブドウ糖や果糖)も多く含まれており、エネルギー補給の役割もあります。
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コカ・コーラ アクエリアス エアーボトル 500mlPET×24本
代表的な製品
- ポカリスエット(大塚製薬)
- アクエリアス(日本コカ・コーラ)
- GREEN DA・KA・RA(サントリー) など
特徴
- 味が甘く、子どもでも飲みやすい
- 水分と一緒にエネルギーも補給できる
- 電解質の濃度は比較的低い
経口補水液とは?
経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、脱水症の治療に用いる「病気の方のための飲み物」です。健康な人が日常的に飲むものではありません。
市販の経口補水液には、「特定用途食品」という、国の制度で決められたマークが付いていています。WHO(世界保健機関)の基準に基づいて、電解質(特にナトリウムとカリウム)と糖分のバランスが厳密に調整されています。-
経口補水液 OS-1 オーエスワン 500ml × 6本セット
代表的な製品
- OS-1(大塚製薬)
- アクアソリタ(味の素) など
特徴
- ナトリウムやカリウムがスポーツドリンクの約3~4倍ほど多く、体内への吸収が早い
- 医師や管理栄養士の指導に沿って使用することが望ましい
- 糖分は控えめで、甘さは少ない
- 味にクセがあり、子どもが嫌がることもある
「スポーツドリンク」と「イオン飲料」は同じもの?
「イオン飲料」とは、電解質(イオン)を含んだ飲料の総称で、スポーツドリンクも経口補水液も「イオン飲料」の一種です。しかし、用途や成分バランスが異なるため、状況に応じた使い分けが必要です。
スポーツドリンクの落とし穴!? 経口補水液にも注意が必要
スポーツドリンクも経口補水液も水分補給に役立つ飲み物ですが、使い方を間違えると逆効果になることもあります。ここでは、それぞれを使う際に気をつけたいポイントをまとめました。
スポーツドリンクの注意点
① 糖分が多い
スポーツドリンクは、エネルギー補給も目的としているため、糖分が多めに含まれています。
子どもが飲みやすい反面、飲みすぎると虫歯や血糖値の急上昇につながることも。- 対策:
体調不良時は少量ずつ、必要なときだけ。日常的な水分補給には水や麦茶がおすすめ。
② 脱水症状には不十分なことも
ナトリウムやカリウムなどの電解質の量は、経口補水液に比べて少なめ。
そのため、下痢や嘔吐などで脱水が進んでいるときには、十分な効果が得られないことがあります。- 対策:
症状が重いときは、医師の指示に従い、経口補水液を優先的に与える。
経口補水液の注意点
① 「熱中症の予防」や「日常の水分補給」としては飲まない
経口補水液は、特別用途食品であり、熱中症や胃腸炎による脱水症を治療するための飲み物です。日常的な水分補給としては飲まないようにし、なるべく医師や管理栄養士などの指導に従って使用しましょう。
- 対策:
自己判断での経口補水液の使用は避け、「必要なときだけ」に限定して使う。
② 効果は商品によって異なる
経口補水液には、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に適するものと、熱中症による脱水状態に適するものがあります。処方箋なしでドラッグストアや薬局で購入できますが、症状に合うものを選びましょう。
- 対策:
商品パッケージに「ノロウイルスなどを原因とする、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水状態に使用できるもの」「熱中症による脱水状態に使用できるもの」などの記載がある。表示をよく読み、用途にあわせて使用する。
③ 味にクセがあり、子どもが嫌がる場合は工夫して飲ませる
経口補水液は、ナトリウム濃度が高く、糖分が少ないため、しょっぱくて飲みにくいと感じる場合もあります。
- 対策:
冷やして飲ませる、ゼリータイプを与える、スプーンで少しずつ与える、ストローを使うなど飲み方を工夫する。
子どもに経口補水液を飲ませるときは
経口補水液は1歳未満の赤ちゃんに飲ませることもできますが、事前に医師や保健師に相談し、指示に従いましょう。また、1歳以上でも、飲ませる量やタイミングには注意し、商品パッケージの確認や医師の指導に沿って与えるようにしてください。
家庭に常備しておくならどっち?どう備える?
子どもの体調不良は、突然やってきます。
夜間や休日に発熱や下痢が始まると、すぐに買いに行けないことも多いため、あらかじめ必要な飲み物を備えておくことが安心につながります。
ここでは、スポーツドリンクと経口補水液、それぞれの備え方や選び方のポイントをご紹介します。
どちらもあると安心。でも優先順位をつけるなら?
スポーツドリンクは「日常使い」や「軽い体調不良時」用に
- 外遊びでたくさん汗をかいたときや、軽い発熱時の水分補給に便利
- 子どもが飲みやすく、常備しておくと安心感がある
- 糖分が多いため、飲みすぎには注意
経口補水液は「いざというとき」のために
- 高熱や下痢・嘔吐などで脱水症の症状が見られた場合に、限定的に使用する
- 味が苦手な子には、ゼリータイプを併用する、冷やして飲ませるなどの工夫を
- 賞味期限に注意しながら、非常用としてストックする
選び方を知っておけば、ママやパパの安心につながります。子どもの様子をよく観察し、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
子どもの体調不良や症状が現れた際には決して自己判断をせず、かかりつけの医師にご相談ください。
完璧でなくても大丈夫。大切なのは、子どもの様子をよく観察し、必要に応じて医療機関に相談すること。そして、日頃から少しずつ知識を備えておくことで、いざというときに慌てずに対応できるようになりますよ。