子どもの夜驚症、夢遊病とは?家庭でできるケアや予防法を徹底解説
夜中に子どもが突然泣き叫んだり、歩き出したりして、呼びかけてもまったく反応しない…
こんなわが子の行動に、戸惑ったことはありませんか?
それは「夜驚症」や「夢遊病」と呼ばれる、睡眠に関する症状かもしれません。一見怖く感じるかもしれませんが、多くは成長にともなって自然におさまる一過性のものです。
この記事でわかること
- 子どもが夜中に突然泣き叫ぶ行動の正体(夜泣き/夢遊病/夜驚症)
- 夜驚症と夢遊病の症状と原因
- どのくらいの子どもに起こるか
- 親ができるケアと予防法
- 受診するべきかどうか
-
この記事を監修いただいた専門家
保健師 シホ
10年以上にわたり自治体保健師として感染症や母子保健などの業務に従事し、多くの住民に寄り添い支援を行う。他にも、病院看護師としての臨床経験や学校保健師としての業務経験など、幅広く公衆衛生に従事する経験を持つ。現在、一人娘を育てながら、ICTを使ってより多くの人々の健康支援に寄与できるよう、育児コラムの編集・監修などにも活動を広げている。趣味は映画鑑賞。
夜驚症|睡眠中に突然悲鳴を上げて怖がり出す
子どもが眠ってから1〜3時間後の深い眠りの最中に、突然泣き叫んだり、激しく動いたりしたら、それは「夜驚症(やきょうしょう)」 ※の可能性があります。
※正式には「睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)」
「夜驚症」に当てはまる主な行動
- 突然「キャー!」と叫んで起き上がる
- 心拍が早く、汗をかき、息が荒くなる
- 顔をひきつらせ、「怖い」と怯えたような表情を見せる
- 声をかけてもなだめても反応しない
- 発作後は再び眠りにつき、翌朝は覚えていない
![泣いて起きてしまった子どもをなだめているママのイラスト]()
一度の発作は数分から10分程度でおさまることが多く、けがをすることはほとんどありません。典型的には、夜の最初の数時間、ノンレム睡眠の最も深い段階から部分的に覚醒したときに起こるといわれています。
夢遊病|睡眠中に起き上がって歩き回る
眠っている間に無意識に起き上がって歩いたり、物に触れたりなどの行動が見られる場合、「夢遊病(むゆうびょう)」 ※の可能性があります。
※正式には「睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)」
「夢遊病」に当てはまる主な行動
- 布団の上に立ったり座ったりする
- ベッドから起きて部屋の中を徘徊する
- 意味のない会話をする
- 顔つきはぼんやりしていて、目が開いていても意識がない
- 翌朝、本人はまったく覚えていない
![夢遊病の子どものイラスト]()
最も深いノンレム睡眠の段階に起こることが多く、通常は数分〜30分程度で自然に落ち着きます。
どのくらいの子どもに起こる?
夜驚症や夢遊病は、子どもに多く見られる症状です。脳の発達途中にあるこの時期は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」の切り替えが不安定なため、こうした症状が現れやすくなるといわれています。
![夜驚症で布団の上で暴れて泣いている子どものイラスト]()
夜驚症が多くみられる時期
- 3〜8歳頃に起こりやすい
- 子どもの約1〜6%にみられる
- 9歳を過ぎると発症率が下がり、思春期までに自然におさまる
夢遊病が多くみられる時期
- 夜驚症よりやや年齢が高く、5~12歳頃に起こりやすい
- 子どもの約10〜14%にみられる
- 夜驚症と同様、思春期までに自然に消えることが多い
夜驚症と夢遊病は併発することも
夜驚症を起こす子どもの約3分の1に、夢遊病の症状もみられます。5〜12歳の子の約15%が、少なくとも1回は夢遊病を経験するといわれています。
寝言が多いのはサイン?夜驚症との関連性
寝言と夜驚症は、どちらも睡眠中に脳の働きが不安定なときに起こる現象です。
ただし、寝言自体は多くの子どもに見られる自然な現象であり、必ずしも夜驚症が起こるわけではありません。過度に心配せず、まずは様子を見守りましょう。
原因の多くは「疲労」「ストレス」「体調不良」
考えられる主な要因
- 疲労や睡眠不足
- 発熱や体調不良
- 就寝前の興奮(ゲーム、テレビなど)
- ストレスや生活リズムの乱れ
- 家族歴(遺伝的な傾向もある)
![夜遅くまでゲームをしている子ども、発熱している子どものイラスト]()
夜泣きとは違うの?|夜泣き・夜驚症・夢遊病を一覧で比較
夜泣きは、乳児期の赤ちゃんが夜中に目を覚まし、泣いたりぐずったりする状態です。意識はあり、抱っこや授乳などで落ち着くことが多いのが特徴です。
夜泣きと夜驚症と夢遊病、混同しやすい3つの症状を一覧に整理しました。夜泣き・夜驚症・夢遊病の比較表
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発作時の対応と家庭でできるケア
夜驚症や夢遊病は、一時的なものであることがほとんどです。発作が起こったら、ママやパパは落ち着いて以下のような工夫をしてみましょう。
無理に起こさない
発作中に無理に起こそうとすると、混乱して暴れたり、さらに泣き出すこともあります。安全を確保し、静かにそばで見守りましょう。
安全な睡眠環境を整える
動いたり、部屋を歩き回ったりしてもケガをしないように、以下のような配慮をおすすめします。
- 敷布団やマットレスなど低い寝具に寝かせる、またはベッドの周囲にクッションを置く
- 鋭利な家具の角を保護する
- ドアや窓にチャイルドロックをつける
- 階段にゲートを設置する
規則正しい生活リズムを心がける
- 決まった時間に寝起きする
- 就寝前はスマホ・ゲームなどの刺激を控え、リラックスした時間をとる
- 昼寝の時間が長すぎないようにする
![規則正しい生活のイラスト]()
夜驚症や夢遊病は「病気」?受診の目安は?
医学的には「睡眠時随伴症」の一種
子どもによくみられる夜驚症や夢遊病は、どちらも「睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう/パラソムニア)」と呼ばれる睡眠障害の代表的なものです。特にノンレム睡眠の深い段階で起こることが多いとされています。
![夜中、泣いて起きてしまった子どもをなだめているママのイラスト]()
治療することなく治まる場合が多い
夜驚症と夢遊病は、多くの場合、特別な治療は不要です。 子どもの脳が発達途中にあることや、睡眠の切り替えが不安定なために起こることが多いので、発達に伴って自然と良くなっていきます。
ただし、以下のような症状があるときは、かかりつけの小児科や小児神経科・睡眠外来などを受診して相談してみましょう。
こんなときは受診しましょう
- 発作の頻度が多い、時間が長い
- けいれんがある
- けがにつながる行動が見られる
- 日常生活に支障がある
子どもの体調不良や症状が現れた際には決して自己判断をせず、かかりつけの医師にご相談ください。








子どもの脳の発達に伴って見られる症状なので、ほとんどの場合は思春期までに自然におさまるといわれています。それでも心配な場合は、医療機関で相談してみるのもひとつの方法。ひとりで抱え込まず、安心できる環境づくりをしていきましょう。