“男らしさ・女らしさ”の何が問題?子どもの日常に潜むジェンダーバイアス
男の子らしさ、女の子らしさ──。
普段の生活の中で、ふと「これって性別と関係あるの?」と感じたことはありませんか?
例えば、
「女の子はピンク」「男の子は青」
「おままごとは女の子」「戦いごっこは男の子」
「男の子なんだから泣かないで」「女の子なんだからおしとやかに」
どれも悪気のない言葉ですが、子どもにとっては「こうあるべき」と思い込むきっかけになることがあります。
今回は、子どもの「自分らしさ」を大切に育てたいママ・パパのために、日常に潜むジェンダーバイアスと、その向き合い方を考えていきます。
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ジェンダーバイアス | 性別による無意識の思い込み
ジェンダーバイアスとは、性別による無意識の思い込みや決めつけのことです。
「男の子は元気で活発」「女の子はやさしくておしとやか」──
こうした言葉の裏には、性別に基づいた“こうあるべき”という期待があり、誰もがつい持ってしまう「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」にあたります。
小さな子どもにとって、周囲の言葉は「あたり前のルール」として受け取ります。その積み重ねが、「自分はこうしなきゃいけない」「自分は間違っているのかも」という気持ちを生み、自己表現がしにくくなる場合があるのです。![男の子?女の子?というイメージイラスト]()
よくあるジェンダーバイアスの事例
子どもとの日常の中には、無意識のうちに「男の子らしさ」「女の子らしさ」を前提にした関わりが潜んでいます。
遊びの場面での声かけ
「おままごとは女の子の遊び」「ヒーローごっこは男の子の遊び」といった言葉が、子どもの選択肢を狭めてしまうことがあります。
![女の子がおままごと遊び、男の子がヒーローごっごをしているイラスト]()
座り方や立ち居振る舞いの教え方
家庭や園で、正座を“おかあさん座り”、あぐらを“おとうさん座り”、横座りを“おねえさん座り”── などと子どもに伝えるケースもあります。性別と動作を結びつけることで、固定イメージにつながることもあります。
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色や持ち物の選び方
お店で自然と、女の子にはピンクのものを、男の子には青のものを手に取ることがあります。そして、子どもが別の色を選ぶと、つい「珍しいね」と言ってしまう──。これも、色と性別を固定してしまうことになります。
![ピンク色と青色のファイルのイラスト]()
感情表現への反応
男の子が泣いたときに「泣かないの!」、女の子が元気に走り回ると「おしとやかにしようね」など、性別によって違う反応をしてしまうことがあります。
![泣いている男の子と、活発な女の子のイラスト]()
園や学校の活動で
行事の配役や係活動などで、「力仕事は男の子」「飾り付けは女の子」と分けられることもあります。
![力仕事をしている男の子と花の世話をしている女の子のイラスト]()
どれも悪意のない日常のひとコマですが、繰り返されるうちに子どもが性別の固定観念を持ち始めてしまうことがあります。
まずは、子どもに対して無意識に使っていないかどうか、大人が気づくことからスタートです。
ジェンダーバイアスはなぜ問題になるのか
小さな「男らしさ・女らしさ」の積み重ねは、子どもに次のような影響を与えることがあります。
- 「自分らしさ」を抑えるようになる
- 性別に合わないことを避けてしまう
- 自己肯定感が下がる
- 将来の選択肢を狭める
たとえば、科学に興味を持った女の子が「理系は男の子っぽい」、人形遊びが好きな男の子が「女の子みたい」と言われたら、子どもは「好き」を隠すようになってしまう可能性があります。
SDGs(持続可能な開発目標)とも関わりがある
「ジェンダーバイアスをなくすこと」は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にも深く関わっています。
特に関連があるのは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の項目です。![SDGSのイメージイラスト]()
この目標は、「性別を理由に差別されたり、機会を制限されたりしない社会をつくる」ことを目指しています。
これは、大きな政策や国際問題だけの話ではありません。家庭や教育現場など、日常の小さな場面にもつながっています。家庭でできる工夫は?
言葉のかけ方を意識する
性別で行動を決めつけるのではなく、子どもの行動や気持ちに注目することがポイントです。
こうしてみよう
「男の子だから泣かないで」
→ 「どう感じた?」
「女の子らしくしてね」
→ 「丁寧に伝えようね」「やさしくしてみようか」性別による固定観念を押し付けず、子どもが自分で考えながら行動できるような声かけを意識してみましょう。
遊びや服、持ち物の選択を尊重する
服や色、遊びを選ぶときは、「性別に合うか」より「子どもがどう感じるか」を大切にしましょう。
こうしてみよう
「珍しいね」と評価せず、「そういうのもいいね」と受け止めましょう。
家事やお手伝いを性別で分けない
「お兄ちゃんはゴミ出し」「妹は食器運び」などの、役割を性別で分けないようにしましょう。
こうしてみよう
順番や得意・不得意で分担を。家族みんなで協力する姿勢を見せることで、自然と役割の偏りを減らせます。
違いを受け入れる会話の工夫
“正す”よりも“広げる”会話を意識しましょう。
こうしてみよう
例えば、子どもが「男の子なのに髪が長いね」と言ったら、「そうだね、いろんな髪型があるね」と返してあげると、子どもも違いを受け入れやすくなるでしょう。
![ピンク色のウサギのぬいぐるみを欲しがる男の子に、「そういうのもいいね」と話すママのイラスト]()
区別が必要な場面とのバランスを考える
ジェンダーバイアスをなくすことは大切ですが、すべての区別をなくす必要はありません。
一見、矛盾しているようですが、体のしくみや発達など、医学的・生理的な違いに基づく区分けは、子どもに安心感を与えたり、安全を守ったりするためには欠かせないものです。
たとえば、トイレや更衣室を男女で分けるのは、「性別による区別」ではなく「プライバシーを守るための配慮」。また、思春期の成長や健康教育では、男女それぞれの体の特徴を学ぶことが、自分や他者を尊重する第一歩になります。
![男の子、女の子の区別するマーク]()
大切なのは、「区別しないこと」ではなく「違いを理解して尊重すること」。
子どもが混乱しないように、「体にはいろんな違いがあるけど、どれも大切」と丁寧に伝えていきましょう。あわせて読みたい
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園や学校との関わり方
園や学校でのジェンダーバイアスが気になることもあるでしょう。そんなときは、「間違っている」と指摘するよりも、一緒に考える姿勢で伝えることをおすすめします。
たとえば、
「最近、家庭でも“男の子らしさ・女の子らしさ”と“自分らしさ”について考えています。園ではどんなふうに伝えているのか、よかったら教えてもらえますか?」
と、疑問ではなく「関心」として伝えることで、先生も受け取りやすく、話し合いのきっかけを作ることができます。
子どものために「一緒に考える関係」を築くことが何より大切です。![保育園で、保育士に抱かれ手を振っている子どもと、手を振るママのイラスト]()










