第3回目となる今回は、一般企業のサラリーマンから起業し、育児119サービスの立ち上げに至った想いや感じている課題について伺いました。

公開日 2025.05.16
第3回

妻の妊娠中に脱サラして起業!育児119を立ち上げの理由や想い、妻の反応は?

こそだてDAYS
もともと会社員だったかずまるさんが、子育て支援サービスを立ち上げられたわけですが、起業を決意したきっかけを教えてください。
インタビューに答えるかずまるさん
かずまるさん(以下、敬称略)
SNSで発信を始めてから、ママの悩みを聞く機会が増えたことで、社会問題の大きさに気づきました。ママの力になりたいという想いは強くなる一方、何をしたらいいのかは分からない状況でした。そんなある日、Twitter(現:X)で、とあるママの投稿がバズったんです。それは「育児がつらい、リフレッシュしたいという時に、既存のベビーシッターでは事前登録なども多く、利用までのハードルが高いので難しい。利用用途を問わずに、すぐに駆けつけてくれるようなサービスがあったらいいな」という内容でした。 その投稿を見たとき、僕の中でビビッときたというか、これだ!!!みたいな、全身にイナズマが走ったような感覚になりました。もう、この瞬間に「自分がそんなサービスを作る!」という決心をしていました。これが、起業を決意したきっかけです。
こそだてDAYS
前職とは全く違う業界への挑戦であり、さらに起業を決意されたとき、奥様は二人目のお子さんを妊娠中だったんですよね。起業への迷いはありませんでしたか?
かずまる
迷いは1ミリもありませんでした。いきなり起業を思いついたわけではなく、発信をする中で、ずっと抱えいていた想いをどう形にしたらいいのかが見えた瞬間、もう覚悟を決めていました。ある意味、バカになっていたんだと思います(笑)。 僕が、「利用ハードルをぐっと下げ、連絡をしたらすぐに駆け付けてくれるサービスを立ち上げる」と決意して、2日後にその想いをSNSで発信したんです。その投稿へのいいねは7万件、コメントは1500件。さらにDMは2000件を超え、この時代に求めてられているサービスという確信づいたものがありました。助けてほしいママだけでなく、保育士として働く方から「自分もママたちの助けになりたい」というDMをいただいたのも、心強かったですね。 あとは、まだ一人目の子が小さく、二人目もこれから生まれるという状況ではありましたが、子どもが大きくなったらやろう!という発想は、ありませんでした。 【子どもがいたからできた】と言いたかったんです。ちょっとわがままでも良いから、好きなことをやろうと。あとは、妻となら、起業をしながらうまくやっていける自信もありました。
こそだてDAYS
起業の決意を伝えられたとき、奥様はどんな反応でしたか?
かずまる
奥さんには、決意した次の日に伝えたんです。もし反対されても、どうにかして説得すると決めていましたが(笑)。実際、奥さんの反応は「1日だけ考えさせてほしい」でした。 その翌日、奥さんからテーブルに座ってほしいと言われました。さすがに2人目妊娠中でもあったので「なんで、今なの」とか「子どもが大きくなってからにしたら」みたいなワードが来るのでは?とよぎりました。
しかし、第一声は「会社の服捨てたよ」でした。 僕の会社には、制服みたいなものがあったんですが、それを捨てたと。 一瞬、僕の頭の中は「???」と凍りつきました。 奥さんからのメッセージは、「制服は捨てたから、もう会社員には戻れないよ」つまり、「起業してがんばれ」というメッセージだったんです。 もちろん、妊娠中だしいろいろ不安もあったと思うんですけど、なんて肝が据わっている奥さんなんだという「感謝の気持ち」と、何がなんでも「家族も幸せ」にするという気持ちが溢れました。そう背中を押してもらえたから、今があるんだと、常に感謝の気持ちを持っています。
ちなみに、実際、会社の制服は貸与品だったので、隠してあっただけでした(笑)。
こそだてDAYS
奥様のかずまるさんへの信頼を感じますね。「制服を捨てた」という言葉は、奥様の後押しだったんですね。
かずまる
奥さんも、僕が言い出したら聞かないってことをわかってくれていたようです。それに、SNSでの発信を通して、僕自身が社会課題を感じ「ママたちに、何かできないか」ということを奥さんともずっと話していたので、僕の想いや本気度を汲み取ってくれたのかもしれません。
こそだてDAYS
起業しようと決意されてから、実際に起業するまでの期間はどれくらいでしたか?
かずまる
サービスを立ち上げようと思ったのは、2022年9月です。法人化する前に、全国6箇所で、それぞれママや保育士さんを集めて、本当にニーズはあるのか、ママは何を求めているのか、各地でイベントを開催し、コミュニティーを作りました。そこから具体的なサービス内容を練って、保育士さんを集め、東京で「育児119(いくじ いちいちきゅう)」というサービスをスタートしました。脱サラして法人化したのは2024年3月です。
こそだてDAYS
会社員として働きながら、起業の準備をされたんですね。育児119サービスの特徴について教えてください。
かずまる
他社との大きな違いとして、SOS依頼(今、助けてほしい)というニーズに、電話1本で24時間応える、駆けつけサービスという点があります。緊急時だけでなく、もちろんリフレッシュでの利用も大歓迎です。複雑な登録は省き、LINEから簡単に利用ができる仕組みです。現場に駆け付けるスタッフは有資格者で、しっかりと面接をしたうえで採用し、研修を受けた人のみです。また、ベビーシッターサービスは、子どもに焦点を置いていることが多いですが、育児119は「保護者の心に寄り添う」という観点から、駆けつける方が保護者の気持ちに寄り添えるというのも、よりママたちに安心してご利用いただける点だと考えています。
こそだてDAYS
育児119では、ベビーシッターという言葉ではなく、あえて「子育て支援サービス」や駆け付けてくれるスタッフのことも「頼ってさん」という名称を使っていますよね。このあたりのこだわりを教えてください。
かずまる
言葉が与える印象って大きいんですよね。「ベビーシッター」という言葉自体は認知されているものの、一般家庭には十分に浸透していません。それに「裕福層向けサービス」とか、「特別な状況でしか利用できない高額なサービス」というイメージを抱かれがちで、利用の敷居を高く感じてしまう傾向があると感じました。 これだと「必要な時に気軽に頼れるサービス」という「育児119」の理念とは少し離れてしまうため、あえて別の表現を採用しました。 「子育て支援」という言葉は、シンプルかつ馴染み深い日本語であり、パパ、ママに対して「頼ることは特別なことではなく、日常的な助け合いの延長」という印象を与えると考えました。「支援」という言葉は公共性や親しみを含むため、「自分たちのためにあるサービス」と感じてもらいやすいと思ったことも理由です。 あとは、「頼ってさん」という名称には、親しみやすさと温かさを込めています。「頼る」という行為は、特に育児中の親にとって一種の「負い目」や「迷い」を伴うことがありますが、「頼って“さん”」という名称を使うことで、「頼ることは自然で大切なことだ」と認識してもらえるよう工夫しています。 「育児119」は、育児中の親を孤立させず、困った時にすぐ手を差し伸べられる社会を目指しています。そのため、名称や表現も、利用者のパパやママへの「敷居の低さ」や「気軽さ」を重視して、サービスの理念と一致させました。
こそだてDAYS
かずまるさんが、これから解決したい社会課題はどんなものでしょうか。
かずまる
核家族化や共働きが増える中で、「孤独」を抱えながら、子育てをしている人は多くいます。「産後うつ」や「孤独」を解消し、誰もが気軽に頼れる社会に。社会全体で子育てができる世の中にしたいと強く思っています。

まとめ

かずまるさんが起業を決意したきっかけと、育児119の立ち上げに込めた想いを伺いました。妊娠中の奥様の力強い後押しと、不安がないわけではないはずの奥様の気持ちも汲み取って、感謝と勇気を持って挑戦できたというエピソードは、かずまるさんの原動力につながっているようにも感じました。 次回は、育児119サービスの利用者様の体験談をマンガでご紹介します!

石黒 和希
株式会社なつのそら 代表取締役
”助けを求める子育て世帯を救いたい” そんな想いから脱サラし、「育児119」サービスを立ち上げた。 本業は父親。副業は株式会社なつのそら 代表取締役(育児119)。 趣味は読書と筋トレ。焼肉と韓国料理が大好き。
■Instagram:@kazu_maru5

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