

この記事を監修いただいた専門家
保健師 シホ
10年以上にわたり自治体保健師として感染症や母子保健などの業務に従事し、多くの住民に寄り添い支援を行う。他にも、病院看護師としての臨床経験や学校保健師としての業務経験など、幅広く公衆衛生に従事する経験を持つ。現在、一人娘を育てながら、ICTを使ってより多くの人々の健康支援に寄与できるよう、育児コラムの編集・監修などにも活動を広げている。趣味は映画鑑賞。
この記事を監修いただいた専門家
管理栄養士 隅弘子
(ひろ子先生)
10年以上にわたり自治体保健師として感染症や母子保健などの業務に従事し、多くの住民に寄り添い支援を行う。他にも、病院看護師としての臨床経験や学校保健師としての業務経験など、幅広く公衆衛生に従事する経験を持つ。現在、一人娘を育てながら、ICTを使ってより多くの人々の健康支援に寄与できるよう、育児コラムの編集・監修などにも活動を広げている。趣味は映画鑑賞。
マンガ「妊娠高血圧症候群」














妊娠高血圧症候群の判定基準は「140/90以上」
妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)は、妊娠中に高血圧がみられる病気のことです。自覚症状がない場合がほとんどで、多くの場合、妊婦健診での血圧測定で以下の数値がみられ、そこで初めて妊娠高血圧症候群と診断されます。
妊娠高血圧症候群の判定基準
軽症 | 重症 | |
---|---|---|
最高血圧(収縮期) | 140mmHg以上 | 160mmHg以上 |
最低血圧(拡張期) | 90mmHg以上 | 110mmHg以上 |
※最高血圧、最低血圧のどちらかでも超えた場合は判定 |
以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていましたが、現在は「妊娠高血圧症候群」という名称に統一されています。
高血圧とタンパク尿がみられたら「妊娠高血圧腎症」
妊娠高血圧症候群のうち、高血圧にタンパク尿を伴った場合は「妊娠高血圧腎症(にんしんこうけつあつじんしょう)」と診断されます。
軽症 | 重症 | |
---|---|---|
タンパク尿 | 300mg/日以上 | 2.0g/日以上 |
最低血圧(拡張期) | 90mmHg以上 | 110mmHg以上 |
※タンパク尿が出ていなくても、肝臓や腎臓の機能障害など他の症状がみられた場合にも妊娠高血圧腎症と診断されることがあります。 |
妊婦健診の尿検査でタンパクが出ると、母子手帳の「尿蛋白」の欄に「陽性のチェック(+、++、+++など)が記入されます。プラスの数が多いほど尿中にタンパクが多いことをあらわします。具体的な数値は表記されないことが多いので、気になる場合は病院に確認しましょう。
妊娠高血圧症候群は4種類
妊娠高血圧症候群には、いくつかの種類があります。
病名 | 発症と軽快時期 | タンパク尿 |
---|---|---|
妊娠高血圧 | 妊娠20週以降 (妊娠後半)~出生後12週まで | タンパク尿は出ない。 |
妊娠高血圧腎症 | 妊娠20週以降 (妊娠後半)~出生後12週まで | タンパク尿が出る。(出ない場合もある) |
加重型妊娠高血圧腎症 |
| |
高血圧合併妊娠 | 妊娠20週より前(妊娠前も含む)から高血圧で、出産まで加重型妊娠高血圧腎症の症状を発症しなかった場合 |
妊娠高血圧症候群であらわれる症状
主な症状
- むくみ(浮腫)
- 頭痛
- めまい
- 耳鳴り
など
ただし、これらの症状は妊娠中の体調変化と区別がつきにくいです。ほとんどの場合は自覚症状がないため、気が付いたら血圧が妊娠高血圧症候群の範囲内に入っていた…ということも。そのため、妊婦健診での定期的な血圧チェックがとても重要です。
重症の場合にみられる症状
- 強い頭痛(これまで経験したことがないような痛み)
- ろれつが回りにくい
- 手足が動きにくい
- ふだんと違う胃の痛みや吐き気
など
これらの症状をひとつでも自覚したら、すぐに産婦人科へ連絡しましょう。
妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降に発症しやすい
妊娠高血圧症候群は、妊娠後半(妊娠20週以降)に発症しやすいのが特徴です。 妊婦さんの10〜20人に1人の割合で起こると言われており、多くは出産後短期間(産後6~12週くらい)のうちに軽快します。しかし、重症化すると、ママだけでなく赤ちゃんにも影響が及ぶことがあるため、早めの発見と対応がとても大切です。
妊娠初期に胎盤がうまく作られないことが関係している?
妊娠高血圧症候群の原因はまだはっきりと分かっていませんが、妊娠初期に胎盤がうまく作られないことが関係しているとされています。胎盤がうまく形成されずに赤ちゃんへの血流が悪化すると、ママの体は赤ちゃんにできるだけ血液を送ろうとして血圧が上がってしまうと考えられています。
妊娠高血圧症候群になりやすい7タイプ
妊娠高血圧症候群は誰にでも起こり得ますが、次の項目に当てはまる方は、特にリスクが高いので注意しましょう。
- 初めての妊娠の方(初産婦)
- 40歳以上の方
- 肥満(BMI25以上)の方
- 双子、三つ子などの多胎妊娠の方
- もともと高血圧や糖尿病、腎臓病などの持病がある方
- 以前「妊娠高血圧症候群」になったことがある方
- 高血圧の家族がいる方
など
妊娠高血圧症候群の予防に今からできる対策5選
妊娠高血圧症候群を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げるためにできることもあります。気になることがあったら、早めに医師に相談しましょう。
①妊婦健診での定期的な血圧チェック
血圧やタンパク尿を定期的にチェックすることで、早期発見につながります。心配な場合は、自宅で血圧を測るのもおすすめです。

②食事の見直し
過剰なカロリーや塩分の摂取は控え、良質なタンパク質を摂取するなどバランスを意識しましょう。

③適正な体重管理
妊娠中の体重増加は、多すぎても少なすぎてもよくありません。特に、急激に増えないよう管理しましょう。

④適度な運動習慣
主治医と相談のうえ、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れるとよいでしょう。

⑤ストレスをためない生活
十分な休息を取り、リラックスできる時間を持つようにしましょう。

何より、自己流で対処しようとせず、妊婦健診を必ず受け、医師や管理栄養士のサポートを受けることが大切です。
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血圧が気になったら、家庭での測定も
血圧が妊娠高血圧症候群の範囲外でも、妊婦健診で「血圧が高め」と指摘された場合や、血圧に不安がある場合などは、家庭用の血圧計などでも測るといいでしょう。
家庭血圧は135/85mmHg以上で注意
日本高血圧学会によると、家庭血圧の場合は“高血圧”の基準が異なります。
軽症 | |
---|---|
最高血圧(収縮期) | 135mmHg以上 |
最低血圧(拡張期) | 85mmHg以上 |
血圧は、少しずつ、あるいは急に血圧が上がる場合があるので、普段から家庭血圧を測定する習慣を身につけましょう。
病院で血圧を測ると数値が高く出る「白衣高血圧」
病院やクリニックで血圧を測ると、緊張などで数値が高く出てしまう「白衣高血圧」の妊婦さんもいます。そのような方にも家庭での定期的な血圧測定がおすすめです。
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妊娠高血圧症候群によるママと赤ちゃんへのリスク
妊娠高血圧症候群は、放っておくと重症化し、ママと赤ちゃんの両方にさまざまなリスクが生じます。
ママのリスク
- 子癇(しかん)
けいれん発作を引き起こし、母子ともに命にかかわる危険な合併症です。 - HELLP症候群
肝機能障害・溶血・血小板減少が同時に起こる、緊急対応が必要な合併症です。 - 脳出血・肝臓や腎臓の機能障害
血圧の急上昇により、脳や肝臓・腎臓に重大な障害を及ぼすリスクがあります。

赤ちゃんのリスク
- 胎児の発育遅延(胎児発育不全・胎児機能不全・低出生体重児)
胎盤の血流が悪くなることで、赤ちゃんの成長が遅れることがあります。 - 常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)
胎盤がはがれると赤ちゃんに酸素が届かなくなり、緊急帝王切開が必要になる場合もあります。 - 早産・死産
重症化すると、赤ちゃんの命に関わることもあるため注意が必要です。

早期誘発分娩、緊急帝王切開になる場合もある
妊娠高血圧症候群は、妊娠を継続していくことがママの身体の大きな負担になることが知られています。ママの状態と赤ちゃんの状態、妊娠週数などすべてを考えた上で、たとえ早産の時期であっても早めにお産をすませた方がよいこともあるため、安全を優先して、医師の判断により、早期誘発分娩になったり、緊急帝王切開での出産になったりする場合もあります。
里帰り出産を希望している場合は早めに確認・相談を
妊娠高血圧症候群は、母子ともにリスクが高くなる可能性があるため、里帰り先の医療機関で受け入れが難しい場合もあります。分娩方法や管理体制について早めに確認しておきましょう。

妊娠高血圧症候群の治療方法
妊娠高血圧症候群と診断された場合の治療は、重症度や妊娠週数によって異なります。主治医の指示通りに通院治療をしますが、重症の場合は入院管理が必要になることもあります。
軽症の場合
- 食事療法(塩分制限)
- 安静指導
- 定期的な血圧チェック
重症の場合
- 入院管理
- 降圧薬の使用
- 早期分娩(誘発分娩・帝王切開)

出産後は短期間(産後6~12週くらい)で軽快する場合が多い
妊娠高血圧症候群と診断された場合でも、多くの場合は出産後短期間(産後6~12週くらい)のうちに軽快します。
出産後も検査を忘れずに
ただし、出産後や将来的に注意が必要です。「治ったから大丈夫」と自己判断せずに、産後も定期的に血圧を測定し、健診を受けることが非常に大切です。
- 出産後すぐに血圧が正常に戻らない場合がある
- 一度妊娠高血圧症候群になったら、次の妊娠で妊娠高血圧症候群の再発率が15〜25%と高くなる
- 将来的に高血圧症や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)といった生活習慣病を発症するリスクが高くなる
医師と相談しながら、将来的な健康管理についても考えていきましょう。
まとめ
妊娠高血圧症候群は、誰にでも起こる可能性がありますが、定期的な健診と生活習慣の工夫でリスクを減らすことができます。「自分だけは大丈夫」と思わず、小さな体のサインにも耳を傾けて、安心してお産の日を迎えましょう。もし少しでも不安な症状があれば、迷わず主治医に相談してくださいね。

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ガンバレ!私も応援していますヨ! ふれぇーっ ふれぇーっ!
参考になりました!
言いたがらない旦那で良かったε-(´∀`*)ホッ ドヤるなー!