妊娠糖尿病の疑い?判定基準と今すぐ始めたい対策5選
にんしんとうにょうびょう
公開日 2025.07.07
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イラスト・ずんこさん
ずんこさん
妊婦健診で「血糖値が高い」「尿糖が出た」などと指摘されたら、それは「妊娠糖尿病」のサインかもしれません。妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて見つかった糖代謝異常のこと。ママと赤ちゃんの健康に影響を及ぼす可能性があり、早めの対策と、早期発見・治療が必要です。この記事では、妊娠糖尿病の検査方法と基準値、症状、ママや赤ちゃんへのリスク、治療、なりやすい人の特徴、さらには毎日の生活でできる予防策まで、保健師監修のもと、妊娠中のママにも分かりやすく解説します。健やかな妊娠期間を過ごし、安全な出産をするために、ぜひチェックしてくださいね。【マンガ解説】

マンガ「妊娠糖尿病」

妊娠中期の健診にて、待合のソファで座って待っている妊婦が「帰りにカフェでお茶していこうかな」と考えている漫画イラスト「今日の糖負荷検査の結果ですが、妊娠糖尿病の疑いがあります」と話す医師の漫画イラスト「に…妊娠糖尿病?」と驚いている妊婦、「紹介状を出しますので総合病院で精密検査を受けてください」と話す向かい合って座っている医師の漫画イラストバッグを肩から下げて歩いている妊婦、「今まで何も言われなかったのに、急に妊娠糖尿病かもだなんて…」と心配な様子の漫画イラストカフェの看板のスイーツを見てよだれが出る妊婦、はっとして「今日は我慢!まっすぐ帰ろう」とダッシュする漫画イラスト電車の座席に座っている妊婦が「妊娠糖尿病ってどんなリスクがあるんだろ」とスマホで調べている漫画イラスト妊娠糖尿病の説明のイラスト妊娠糖尿病のリスク、ママへの影響と赤ちゃんへの影響の説明イラスト買い物をしながら、「血糖値を下げるにはどんな食事がいいのかなあ」と野菜を手に迷っている妊婦の漫画イラストその夜、食事中に「妊娠糖尿病?」と驚いている夫、「可能性があるってだけなんだけど、精密検査が必要だって」と話す妊婦の漫画イラスト「妊娠中期から血糖値を下げるインスリンの働きが弱まることも原因みたい」と説明する妊婦をそれを聞いている夫の漫画イラスト「とりあえず甘いものとジュースは控えようかな」と話す妊婦、「妊娠って大変だな」と思う夫の漫画イラスト「妊娠糖尿病の対策を調べてみようか」と夫婦でソファに座りスマホをみている漫画イラスト妊娠糖尿病の予防策5選、①妊婦健診での定期的な血糖値チェック②適正な体重管理③バランスのよい食生活④適度な運動習慣⑤ストレスをためない生活という説明イラストゆっくり食べる、よく噛んで食べる、野菜を先に食べる、「これならすぐできそうだね」という夫、2人で笑顔でご飯を食べている漫画イラスト精密検査まで予防を意識して過ごしている夫婦の漫画イラストそして精密検査の日、「朝ごはん抜きでお腹すいた~」と思いつつ採血をしてもらっているママの漫画イラスト「次にこちらを飲んでください」とブドウ糖ソーダを指さす看護師、「ラムネみたいな感じかな?」と想像している妊婦の漫画イラスト「あまい!」とさけぶ妊婦、「1時間後、2時間後に採血して血糖値を測定しますね」と説明する看護師の漫画イラスト75g空腹時経口ブドウ糖負荷テスト(OGTT)の説明「検査結果が出るまでこちらでお待ちください」と声をかける看護師、「はい」と答える妊婦の漫画イラスト「大丈夫かなぁ…陰性になっているといいけど」と妊婦の約10人に1人はなる妊娠糖尿病というポスターの眺めている妊婦の漫画イラスト

妊娠糖尿病を調べる2つの検査内容と確定診断の基準

①早期発見のためのスクリーニング検査

妊娠糖尿病(にんしんとうにょうびょう)の早期発見のため、妊婦健診で妊娠初期〜妊娠中期のすべての妊婦さんを対象に、血糖検査が行われます。
検査のタイミングは病院によりますが、妊娠初期(10週前後)の採血検査で血糖検査を行い、さらに妊娠24週から28週に行う「50g経口ブドウ糖負荷テスト」で妊娠糖尿病の有無をチェックすることが一般的です。

随時血糖検査

普通に食事をした状態で採血し、血糖値を測定します。

  • 95mg/dL以上(病院により100mg/dL以上)
    →妊娠糖尿病の疑いあり、②の精密検査へ

50g経口ブドウ糖負荷テスト(GCT)

普通に食事をした状態でブドウ糖の入ったサイダーをのみ、血糖値を測定します

  • 1時間後 140mg/dl以上
    →妊娠糖尿病の疑いあり、②の精密検査へ

②確定診断のための精密検査

①で「妊娠糖尿病の疑いあり」とされた妊婦さんを対象に行われる血糖検査です。

75g空腹時経口ブドウ糖負荷テスト(OGTT)

空腹の状態(朝食を抜いて受診など)でブドウ糖の入ったサイダーを飲み、血糖値を3回測定します。

飲む前92mg/dL
1時間後 180mg/dL
2時間後153mg/dL
3回中、1回でも基準値を超えた場合に妊娠糖尿病と診断される

妊娠糖尿病は全妊婦のうちの「12.08%」

最近では、晩婚化・晩産化にともない、妊娠糖尿病になる妊婦さんも増えています。
すべての妊婦さんに糖負荷試験を行うと、12.08%が妊娠糖尿病と診断されるといわれています。ただし、スクリーニング検査で陽性の結果が出た人だけに精密検査(75g経口ブドウ糖負荷試験)をした場合は、妊婦さん全体の17〜9%が妊娠糖尿病と診断されているようです。
この結果からも、妊娠糖尿病は決してめずらしいことではありません。誰でもなる可能性があるため、早めの検査と正しい知識が大切です。

自覚症状がほとんどなく、妊婦健診で気付くことが多い

妊娠糖尿病は、自覚症状がほとんどない病気で、妊婦健診の尿検査や血糖検査で指摘されて初めて分かったという方が多くみられます。なぜ気付きにくいかというと、その症状が妊娠中の体調変化と区別がつきにくいから。症状が進行した場合にみられる口渇(喉の渇き)、頻尿、疲労感、体重減少などは見過ごされがちなので、妊婦健診での血糖検査がとても重要です。

母子手帳の「尿糖」欄について

妊婦健診の尿検査で糖が出ると、母子手帳の「尿糖」の欄に陽性(+、++、+++など)が記入されます。プラスの数が多いほど尿中に糖が多いことをあらわします。

検査前に食べた甘い物や炭水化物が影響することもある

妊婦健診で「尿に糖が出た」場合でも、すぐに妊娠糖尿病と診断されるわけではありません。
尿検査の前に甘い物や炭水化物をたくさん食べると、一時的に陽性になる場合もあるからです。しかし、陽性が続く場合や強陽性の場合には、妊娠糖尿病などが疑われ、精密検査が必要となります。


妊娠糖尿病の予防に今からできる対策5選

将来、糖尿病を発症するリスクは7倍!

妊娠糖尿病になった妊婦さんは、将来的に糖尿病を発症するリスクが7倍高いと言われています。そのため、妊娠中だけでなく、産後も定期的に健康診断を受け、健康的な生活習慣を継続することが大切です。

予防のために今からできる5つの対策

妊娠糖尿病を完全に防ぐことは難しいものの、発症リスクを下げるためのポイントはあります

①妊婦健診での定期的な血糖チェック

定期的に尿検査や血液検査を受け、異常がないか確認しましょう。

採血のイラスト

②適正な体重管理

妊娠中の体重増加は、多すぎても少なすぎてもよくありません。適切な体重管理をしていきましょう。 妊娠前から、標準体重を目標に管理しておくとよいですね。

体重計のイラスト

③バランスのよい食生活

食事は薄味を心掛け、良質なタンパク質を摂取するなどバランスを意識しましょう。

バランスの良い食事のイラスト

④適度な運動習慣

主治医と相談のうえ、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れるとよいでしょう。

ウォーキングをする夫婦のイラスト

⑤ストレスをためない生活

十分な休息を取り、リラックスできる時間を持つようにしましょう。
何より、自己流で対処しようとせず、妊婦健診を必ず受け、医師や管理栄養士のサポートを受けることが大切です。

夫が家事を妻が休息しているイラスト
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妊娠糖尿病の原因は妊娠中の上がりやすい血糖値にある

妊娠中はインスリン働きが弱まりやすい

妊娠中、胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンの働きが抑えられ(インスリン抵抗性)、血糖値が上昇しやすくなります。もともとインスリンの働きが弱めの方が妊娠すると、このインスリン抵抗性が加わり、妊娠糖尿病を発症することがあります。

「インスリン抵抗性」ってなに?

インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効き目が悪くなる状態をいいます。インスリン抵抗性が生じると、血糖値がうまく下がらず、体内に糖がたまりやすくなります。通常は、体がインスリンの分泌量を増やしてカバーしますが、それでも追いつかない場合に、糖尿病を発症するのです。


妊娠の後半(妊娠中期~妊娠後期)に発症しやすい

妊娠糖尿病は、妊娠の後半(妊娠中期~妊娠後期)に発症しやすいとされています。これは、この時期に血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが弱まりやすいためです。
妊婦健診では、初期(10週前後)の採血検査で血糖検査を行い、さらに妊娠24週から28週に行う「経口ブドウ糖耐性試験(OGTT)」で妊娠糖尿病の有無をチェックすることが一般的です。


妊娠糖尿病と一般的な糖尿病との違い

「妊娠糖尿病」と「一般的な糖尿病」は、どちらも血糖値が高くなる病気ですが、大きな違いは「主となる原因」「糖代謝異常の程度」そして「出産後の血糖値の回復」にあります。


妊娠糖尿病と一般的な糖尿病との違い
妊娠糖尿病一般的な糖尿病
主な原因 遺伝的な素因があり妊娠時(特に妊娠後半)のインスリン抵抗性が加わったことが原因 遺伝的素因によるインスリン分泌機能の低下に、生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わることが原因
程度糖尿病の診断基準を満たさない 糖尿病の診断基準を満たす
産後改善される 継続した治療が必要
※ここでいう「一般的な糖尿病」とは2型糖尿病を指す
1型糖尿病:主に膵臓の障害が原因で発症
2型糖尿病:主に生活習慣や遺伝的な影響で発症

ママと赤ちゃんに影響を及ぼす妊娠糖尿病のリスク

妊娠糖尿病と診断されても、医師の指示のもと適切に血糖をコントロールすれば、通常通り出産し、産後も血糖が正常化するケースがほとんどです。しかし、妊娠糖尿病を放置すると、ママと赤ちゃんの両方にさまざまな合併症のリスクが生じます。これらを防ぐためにも、早期発見と血糖管理をしっかり行うことが大切です。

ママのリスク

  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水量の異常(過多・過小)
  • 難産
  • 糖尿病性の網膜症・腎症

赤ちゃんのリスク

  • 流産
  • 巨大児(出生体重4000g以上)
  • 心臓の肥大
  • 低血糖
  • 多血症
  • 電解質の異常
  • 黄疸
  • 胎児死亡
    など

妊娠糖尿病になりやすい6タイプ

妊娠糖尿病のリスクが高い人とは

  • 肥満(BMI25以上)の方
  • 35歳以上の方
  • 家族に糖尿病患者がいる方
  • 妊娠中に体重が極端に増加した方
  • 過去に巨大児を出産した経験がある方
  • 双子、三つ子などの多胎妊娠の方

妊娠糖尿病は遺伝的な要因も

糖尿病の遺伝的要因は、妊娠糖尿病の発症にも影響を与えるとされています。両親や兄弟姉妹に2型糖尿病の人がいる場合、インスリンの分泌能力やインスリン抵抗性などの体質が似ている可能性があり、妊娠中のホルモン変化によって血糖値が上がりやすくなることがあります。
ただし、遺伝だけで決まるわけではなく、生活習慣も大きく関係します。また、母親が妊娠糖尿病だからといって、その子どもも妊娠糖尿病になるとは限りません。心配な場合は、早めに医師に相談しましょう。

まとめ

妊娠糖尿病は、特別な人だけがなる病気ではなく、誰にでも起こる可能性があります。定期的な健診と日々の生活習慣の工夫で、リスクをできる限り減らすことができます。 ママ自身の体を大切にすることが、赤ちゃんを守る一番の近道です。心配なことがあれば、迷わず主治医に相談してくださいね。





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保健師・シホさん
保健師・シホ
10年以上にわたり自治体保健師として感染症や母子保健などの業務に従事し、多くの住民に寄り添い支援を行う。他にも、病院看護師としての臨床経験や学校保健師としての業務経験など、幅広く公衆衛生に従事する経験を持つ。現在、一人娘を育てながら、ICTを使ってより多くの人々の健康支援に寄与できるよう、育児コラムの編集・監修などにも活動を広げている。趣味は映画鑑賞。
ずんこさん
ずんこ
タイ在住の日本人漫画家、イラストレーター。 日本でマンガ家アシスタントなどを経験後、シンガポールのローカルアートスクールにてマンガの描き方を教える。現在はタイ・バンコクを拠点にマンガ・イラストの制作をしている。他にも、シンガポールやベトナムのイベントに、マンガ風似顔絵ブースで参加をするなど、マンガを通してさまざまな人達と交流していきたいと活動を広げている。
参考文献
日本産科婦人科学会「妊娠糖尿病」
https://www.jsog.or.jp/citizen/5706/(最終閲覧:2025/6/18)
MSD マニュアル家庭版「妊娠中の糖尿病」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-女性の健康上の問題/妊娠時に起こる病気/妊娠中の糖尿病(最終閲覧:2025/6/18)
日本糖尿病・妊娠学会「Q&A 妊娠糖尿病とは?」
https://dm-net.co.jp/jsdp/qa/a/q01/(最終閲覧:2025/6/18)
日本糖尿病・妊娠学会 「Q&A 妊娠糖尿病はどれくらいの頻度であるのですか?」
https://dm-net.co.jp/jsdp/qa/c/q01/#:~:text=わが国の糖尿病人口は,ことがわかりました。 (最終閲覧:2025/6/18)
糖尿病情報センター「妊娠と糖尿病」
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/080/030/13.html#07(最終閲覧:2025/6/18)
日本内分泌学会「妊娠糖尿病」
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=94(最終閲覧:2025/6/18)
女性の健康推進室ヘルスケアラボ「妊婦健診は受けないといけないの?」‐「尿糖」
https://w-health.jp/fetation/prenatal_care/#contents6(最終閲覧:2025/6/18)

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