切迫流産とは?原因や対処法、流産との違いなどをマンガで解説【保健師監修】
せっぱくりゅうざん
公開日 2023.05.17
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イラスト・ずんこさん
ずんこさん
妊娠 監修
対象期間
妊娠22週未満の妊婦
費用・価格
個別受診をすれば受診費用(数千円程度)
医師の判断により入院となれば、入院治療費用(保険適用)
妊娠を喜んだ矢先、出血などで「切迫流産」と診断されたら、一気に不安になりますよね。切迫流産の「切迫」は「差しせまった」という意味で、流産とは違い妊娠が継続している状態のことをいいます。切迫流産の正しい知識と、原因や対処法、流産との違いなどをご紹介します。【保健師監修】【マンガ解説】

マンガ「切迫流産」

妊娠9週で体調に大きな変化がなく過ごしている妊婦が外を歩いているイラスト妊娠9週でこのまま無事に妊娠生活を送れることを願っているイラストつわりがひどく生理痛のような腹痛も感じつつトイレに入る女性のイラスト妊娠9週でトイレに入り、出血に驚く女性のイラスト妊娠初期(9週)に出血し慌てて産婦人科に電話をする女性のイラスト産婦人科で、妊娠初期(9週)に出血した女性のエコーの結果を見る医師のイラスト妊娠初期(9週)に出血したが、エコーの結果赤ちゃんは元気であると告げられホッとする女性のイラスト赤ちゃんは元気であるが、切迫流産だと告げられ固まる女性のイラスト切迫流産は流産リスクが高い状態のことであるが、赤ちゃんは大丈夫ということに少しほっとする女性のイラスト切迫流産は22週未満に不正出血、下腹部痛、お腹の張りなどが兆候としてあると解説するイラスト切迫流産となり入院は必要ないが、絶対安静であることを女性に伝える医師のイラスト切迫流産は薬などの治療法がなく安静にして経過観察することになると医師に伝えられ、外出できないのか質問する女性のイラスト切迫流産のため今後2週間は食事トイレ以外は横になり、仕事も母性健康管理指導事項連絡カードを書くため休むことを女性に指示する医師のイラスト高齢出産の場合、特に無理は禁物であると念押しする医師のイラスト切迫流産と診断され、帰宅後に勤務先と夫に連絡する女性のイラスト夫に協力してもらいながら、お風呂はシャワーのみ、食事は夫に準備してもらい日中は寝て過ごしていることを解説するイラスト切迫流産のため、年越しもベッドで安静に過ごす風のイラスト切迫流産後の健診で出血も収まり赤ちゃんの経過も良いため、動いてもよいと妊婦につたえる医師のイラスト妊婦健診の結果が良く、帰りの車で夫に感謝を伝えつつ
喜ぶ夫婦のイラスト妊婦健診の結果、切迫流産は問題ないため久々にお昼ご飯を作ると夫に宣言する女性のイラスト

切迫流産とは?

切迫流産(せっぱくりゅうざん)とは、妊娠22週未満で流産しかかっている状態のことをいいます。流産と聞くと驚いてしまいますが、妊娠は継続しています。ただし、通常より流産リスクが高い状態のため、注意が必要です。慌てずに医師の説明や指示をしっかり聞きましょう。

「切迫流産」と「流産」の違いは?

切迫流産とは

切迫流産は、妊娠22週未満で「流産しかかっている状態」のことを指します。流産との決定的な違いは、まだ妊娠が継続している状態であることです。腹痛の有無にかかわらず、少量の出血(ピンク色や茶褐色のおりもの)がある場合に診断されます。

切迫流産は22週未満に不正出血、下腹部痛、お腹の張りなどが兆候としてあると解説するイラスト

流産とは

流産とは、22週未満で妊娠が終了してしまうことをいいます。
流産は妊娠全体の約15%に起きるといわれ、女性の年齢とともに自然流産率は上昇していきます。流産のうち、約90%が妊娠12週未満の早期流産といわれています。妊娠初期の流産の多くは染色体異常であり、受精卵自体の問題で(受精時には決まっていたこと)、母親側の問題ではないことがほとんどです。

切迫流産と切迫早産との違いは?

どちらの「切迫」も、「差しせまった」という意味になります。

切迫流産は妊娠22週未満で「流産しかかっている状態」のことを指し、切迫早産は妊娠22週から36週の間で「早産しかかっている状態」のことをいいます。

切迫流産の原因・対処法

切迫流産には、根本的な治療法や薬はありません。ほとんどの場合、安静にして経過観察することになります。また、妊娠12週未満か妊娠12週以降かによって、原因と対処が変わってきます。

妊娠12週未満の場合

主な原因

遺伝性疾患、先天性異常などのいわゆる染色体異常で、赤ちゃん側に原因があることが多いとされています。流産すると「早期流産」といわれます。

対処法

薬などの治療法はなく、安静にして経過観察をします。ただし、染色体異常の場合は受精した段階で運命が決まっていることが多く、流産への移行は防ぎにくいとされています。

妊娠12週以降の場合

主な原因

動きすぎ、子宮収縮、感染症、絨毛膜下血腫、絨毛膜羊膜炎、子宮筋腫などで、母親側に原因があることが多いとされています。流産すると「後期流産」といわれます。

対処法

医師の判断で薬が処方されることがありますが、流産を止める薬ではなく、対症療法です。安静にすることが最も重要とされていて、母親に原因があると考えられる場合は、適切な対処により妊娠継続できる可能性が十分あります。症状や、上の子のお世話などで自宅での療養ができない場合には、入院となる場合もあります。

処方される薬

症状に応じて、張り止め(子宮収縮抑制剤)、止血剤、ホルモン剤、抗生物質(感染が考えられる場合)などが処方されます。

自宅での絶対安静

切迫流産の程度によっては、基本的にトイレに行く以外は横になり、安静にするよう指示されます。お風呂もシャワーのみで、もちろん家事や仕事も出来ません。家事や育児はパートナーや家族にお願いし、仕事は母性健康管理指導事項連絡カードや医師からの診断書を出して休業することになります。

切迫流産と診断され、帰宅後に勤務先と夫に連絡する女性のイラスト

切迫流産の兆候・受診の目安

切迫流産の兆候

  • 不正出血
  • 下腹部痛
  • おなかの張り
  • 腰の痛み

このような症状があればすぐに受診を

妊娠初期に、おりものに血が混じる(ピンク色や茶褐色のおりもの)ことはよくありますが、以下の症状がある場合はすぐに受診しましょう。

  • 少量でも鮮血(真っ赤な血)
  • 出血が止まらない
  • 強い腹痛がある
  • 塊のようなものが出た

特に、生理よりも出血量が多いときや、腹痛がひどいときは、異所性妊娠(※)や進行流産の可能性があります。早急に受診しましょう。
また、転んだりぶつかったりなど外的な衝撃を受け、腹痛や出血があったときもすぐに受診するようにしましょう。

※異所性妊娠:受精卵が子宮内膜以外の場所に着床すること(以前は子宮外妊娠と呼ばれていた)

切迫流産のリスクが高まる場合

切迫流産は染色体異常など赤ちゃん側の原因であることがほとんどですが、それ以外でリスクの高まるのは、以下のようなケースです。

多胎妊娠(たたいにんしん)

双子以上の赤ちゃんを妊娠している場合

頸管無力症(けいかんむりょくしょう)

子宮の入り口が開きやすくなっている、子宮頸管が短くなっている場合

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)

子宮に腫瘍(良性)がある場合

子宮の炎症、感染症

子宮頸部に炎症を起こしている場合

動きすぎ

動きすぎにより子宮緊縮(おなかの張り)が起こる場合

切迫流産から流産への移行を予防するには

妊娠初期の流産は、受精卵の段階でその運命が決まっている場合がほとんどです。ですが、少しでもリスクを減らせるよう、特に妊娠12週以降においては日常生活から気を付けて過ごしましょう。

日常生活で意識すること

  • 無理のない妊娠生活を送り、免疫力が下がらないように心がける
  • 妊婦健診をきちんと受け、早期発見につなげる
  • ウィルス感染への予防をする(むやみに人が多い場所に行かないなど)
  • 膣からの感染症を防ぐため、外陰部は清潔に保つ(排便時は前から後ろにふく、温水洗浄器の使いすぎに注意する
  • 飲酒や喫煙をしない
  • 転倒などに気を付ける

お世話が必要な上の子がいる方や、働いている方は、無意識のうちに疲れが溜まっていることもあります。くれぐれも無理をしないよう心がけましょう。

それでも流産してしまったら

日本産科婦人科学会によると、全妊娠の15%程度が流産になっています。たとえ医師の指示に従い安静に過ごしていたとしても、残念ながら妊娠が継続できず、流産に移行してしまうことも珍しくありません。もし、切迫流産から流産になってしまった場合も、決して自分を責めないようにしてくださいね。

まとめ

切迫流産は誰にでも起こり得ることです。妊婦健診をしっかり受けること、ウイルス感染や膣経由の感染症予防を心掛けて過ごしましょう。 切迫流産と診断された場合は、症状に応じて適切に対処することで、正常妊娠に戻る場合もあります。医師から自宅安静を指示されたら、仕事は休み、パートナーや家族の助けを借りて、くれぐれも安静に過ごしましょう。上のお子さんがいる場合は、外部のサポートも上手に利用しながら、少しでも育児の負担を減らすようにしましょう。


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保健師・SHIHOさん
保健師・SHIHO
10年以上にわたり自治体保健師として感染症や母子保健などの業務に従事し、多くの住民に寄り添い支援を行う。他にも、病院看護師としての臨床経験や学校保健師としての業務経験など、幅広く公衆衛生に従事する経験を持つ。現在、一人娘を育てながら、ICTを使ってより多くの人々の健康支援に寄与できるよう、育児コラムの編集・監修などにも活動を広げている。趣味は映画鑑賞。
ずんこさん
ずんこ
タイ在住の日本人漫画家、イラストレーター。 日本でマンガ家アシスタントなどを経験後、シンガポールのローカルアートスクールにてマンガの描き方を教える。現在はタイ・バンコクを拠点にマンガ・イラストの制作をしている。他にも、シンガポールやベトナムのイベントに、マンガ風似顔絵ブースで参加をするなど、マンガを通してさまざまな人達と交流していきたいと活動を広げている。
参考文献
日本産婦人科学会「流産・切迫流産」
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=4 (最終閲覧:2023.4.28)
厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000015864.pdf (最終閲覧:2023.4.28)
公益社団法人 日本産婦人科医会「ハイリスク症例への対応」
https://www.jaog.or.jp/note/2.ハイリスク症例への対応/ (最終閲覧:2023.4.28)
公益社団法人 日本産婦人科医会「後期流産の処置」
https://www.jaog.or.jp/note/5.後期流産の処置/ (最終閲覧:2023.4.28)

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