出産育児一時金とは?支給額と申請方法について
しゅっさんいくじいちじきん
公開日 2023.05.17
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イラスト・ずんこさん
ずんこさん
対象期間
申請期間は出産日の翌日から2年間
出産育児一時金(しゅっさんいくじいちじきん)とは、国民健康保険や健康保険(社会保険)などの被保険者やその家族(被扶養者)が出産した際に、一定の金額が給付される制度です。この記事では、出産育児一時金の対象者、給付額、申請方法についてわかりやすくご紹介します。【マンガ解説】

マンガ「出産育児一時金」

出産費用を心配する未婚で出産することを決めた妊婦の漫画イラスト産院で受付の女性に妊娠7週と告げる妊婦の漫画イラスト出産費用の制度について説明しようとする受付の女性の漫画イラスト結婚していなくて1人で出産して育てることを話す妊婦の漫画のイラスト高額な出産費用を心配する妊婦の漫画イラスト出産育児一時金を知っているかと尋ねる受付の女性の漫画イラスト出産育児一時金とは出産時に健康保健から支給される手当の説明漫画イラスト出産育児一時金と健康保健の仕組みについて解説する漫画イラスト医療機関の出産費用が52万円だった場合の実際の支払額を解説する漫画イラスト健診の費用を補助する妊婦健診の助成券について説明する漫画イラスト出産育児一時金の手続きを希望するか質問する漫画イラスト出産育児一時金の申請には健康保険証と申請書類が必要だと説明する漫画イラスト次の健診時に書類を持ってくることを伝えられた妊婦の漫画イラスト出産費用はなんとかなりそうだと安心する妊婦の漫画イラストスマホからお母さんに電話をかける妊婦の漫画イラストお母さんに子どもができたことを電話で伝える妊婦の漫画イラスト

出産育児一時金とは?

出産は病気やケガではないことから、受診時に健康保険が使えません。そのため、出産時にかかる費用は全国平均で約50万円にものぼります。この多額の費用を援助してくれる出産育児一時金の制度について詳しくご紹介します。

出産費用をカバーしてくれる出産育児一時金

出産育児一時金とは、国民健康保険や健康保険(社会保険)に加入している被保険者が、出産にかかった費用を補填するために受け取れるお金のことです。被保険者の家族(被扶養者)が出産した場合にも支給され、その場合は「家族出産育児一時金」とも呼びます。なお、全国健康保険協会が指す「出産」は、妊娠13週(85日)以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶を含みます。

出産育児一時金と健康保健の仕組みについて解説する漫画イラスト

出産手当金との違いは?

出産時に給付されるものとして出産手当金があります。こちらは出産のために仕事を休みお給料がもらえなかった場合に、収入の補助として給付されるお金です。出産手当金と出産育児一時金の大きな違いは、給付目的と対象者が異なることと、給付額が異なることです。

出産育児一時金の給付対象者と申請期間

健康保険に加入している方の出産が対象

出産育児一時金の給付の対象者と対象期間について、詳しくご説明します。

給付対象者

  1. 国民健康保険や健康保険(社会保険)の被保険者で出産をした方
  2. 国民健康保険や健康保険(社会保険)の被保険者の扶養者(パートナー、家族)で出産をした方

申請期間

出産日の翌日から2年間

給付されるタイミング

出産育児一時金が給付されるタイミングは、申請方法によって異なります。後述の「直接支払制度」と「受取代理制度」を利用する場合は、出産時の医療機関等への支払い時に出産育児一時金を支払いにあてることができます。上記の制度を使わず、自分で申請する場合は、申請完了後から1か月~数か月ほどで給付されます。

出産育児一時金の給付額

出産育児一時金は、実際いくらもらえるの?

出産育児一時金の給付額は、妊娠週数や医療機関等によって支給額が異なります。

出産育児一時金の給付額

出産育児一時金は、出産時の妊娠週数と産科医療補償制度(※1)への加入の有無によって金額が異なり、48.8万円もしくは50万円給付されます(※2)。双子や多胎児を出産した場合には、子どもの人数分だけ給付されます。なお、加入中に健康保険組合によっては付加金が追加支給されることがあります。

※1 産科医療補償制度:分娩に関連して重度脳性まひとなった赤ちゃんが速やかに補償を受けられる制度で、分娩を取り扱う医療機関等が加入する

※2 令和5年4月1日以降の出産の場合

出産育児一時金の給付額
産科医療保障制度への加入
ありなし
妊娠22週未満48.8万
妊娠22週以降50万48.8万

直接支払制度と受取代理制度について

出産育児一時金を出産時の支払いにあてられる制度

多くの医療機関等では「直接支払制度」と「受取代理制度」を導入しています。これは、多額の出産費用の支払い負担を軽減するため、窓口での支払いが「出産費-出産育児一時金の給付額を差し引いた額」で済むようになるものです。

直接支払制度とは

直接支払制度とは、出産育児一時金を各種健康保険組合から医療機関等に対して直接支払う制度のことで、多くの医療機関等で導入されています。例えば、52万円の出産費用で出産育児一時金が50万円だった場合、窓口での支払いは差額の2万円で済みます。直接支払制度の申請手続きは、基本的には医療機関等が行います。

受取代理制度とは

受取代理制度とは、本来は被保険者が受け取るべき出産育児一時金を、医療機関等が被保険者に代わって受け取る制度のことです。直接支払制度の実施が難しい医療機関等が実施しています。被保険者自身で各種健康保険組合に申請する必要があります。

出産育児一時金の申請方法と必要なもの

出産前に申請の準備をしておこう

出産育児一時金で直接支払制度や受取代理制度を利用する場合は、出産前に申請をする必要があります。受取代理制度に関しては、出産予定日まで2か月以内に申し込みを行なう必要があるため、注意が必要です。

出産育児一時金の手続きを希望するか質問する漫画イラスト

直接支払制度を利用する場合

  1. 出産予定の医療機関等に、制度を利用することを申し出る。
  2. 医療機関等が健康保険組合と代理で契約を行うことについての同意書に記入をする。
    その後の手続きは医療機関等が行う。申請先の健康保険組合の手続き方法や差額の発生によっては、被保険者が健康保険組合に対して申請が必要な場合もある。

受取代理制度を利用する場合

  1. 被保険者自身が受取代理制度用の申請書を作成し、被保険者と医療機関等の両方が必要事項に記入する。(出産予定日まで2か月以内に行う必要有)
  2. 被保険者自身が健康保険組合あてに申請書を提出する。
  3. 出産後に医療機関等と健康保険組合の間で手続きが行われる。
    差額が発生した場合は被保険者による差額請求手続きの必要はなく、健康保険組合から被保険者あてに給付がある。

上記の制度を利用しない場合

出産育児一時金を入院費用以外に使う・入院費用を全額自己負担する場合など、前述の制度を利用しない場合は、被保険者が健康保険組合に対して直接請求を行うことになります。この場合の申請期間は、実際の出産日の翌日から数えて2年間となります。

申請に必要なもの
  • 給付金支給申請書
  • 印鑑
  • 健康保険証
  • 振込先の口座情報(通帳など預金口座の記号や番号がわかるもの)
  • 母子健康手帳
  • 差額請求書(直接支払制度を利用した場合、出産費が給付額を下回ったときのみ必要)
  • 出産費用の領収書、明細書(各制度を利用しなかった場合、海外で出産した場合)
  • 戸籍謄本(海外で出産した場合)
  • 海外の公的機関が発行した出生証明書とその翻訳文(海外で出産した場合)

出産育児一時金Q&A

こんなケースでは出産育児一時金はもらえる?もらえない?
出産育児一時金の給付に関するよくある質問をまとめました。

退職する場合も出産育児一時金をもらえますか?

現在の勤務先を退職する場合も、以下の2つの条件を満たしている場合は、出産育児一時金を受け取ることができます。

  • 実際の出産日が退職後6カ月以内であること
  • 被保険者期間が継続して1年以上あること

出産した人とそのパートナーがそれぞれ異なる健康保険に加入していた場合は、両方の健康保険組合から出産育児一時金をもらえますか?

両方の健康保険組合からはもらえません。出産した方が加入している健康保険組合からのみ出産育児一時金の給付を受けられます。

帝王切開で出産しました。出産育児一時金をもらえますか?

帝王切開で出産した場合は、健康保険が適用され高額療養費の対象となります。この場合も、出産育児一時金を受け取ることができます。

フリーランス、自営業、個人事業主も出産育児一時金はもらえますか?

フリーランス、自営業、個人事業主の形態で働いている場合も、国民健康保険から出産育児一時金が給付されます。その際、形態によって手続きが異なることがあります。

海外で出産しました。出産育児一時金はもらえますか?

海外で出産した場合、一時的な渡航であれば出産育児一時金の給付を受けられます。申請時には、日本に居住していることの証明書が必要になります。

出産前に事前に出産費用の支払いをする必要があります。妊娠中に出産育児一時金をもらえますか?

出産前に医療機関等へ事前支払いをする場合、出産育児一時金の給付見込みの方に対して、一時金の一部を無利子で貸付する出産費貸付制度があります。詳しくは加入中の健康保険組合にお問い合わせください。

まとめ

出産育児一時金は、国民健康保険や健康保険(社会保険)などに加入している被保険者やその家族(被扶養者)であれば、出産後に48.8万円もしくは50万円がもらえる制度です。出産には多額のお金がかかりますが、出産育児一時金により金銭面での援助があります。直接支払制度や受取代理制度を使って、入院中の窓口での支払い負担を軽減したい場合は、妊娠中に書類や申し込みなどの準備が必要です。出産後に慌てないよう、予め確認しておきましょう。


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ずんこさん
ずんこ
タイ在住の日本人漫画家、イラストレーター。 日本でマンガ家アシスタントなどを経験後、シンガポールのローカルアートスクールにてマンガの描き方を教える。現在はタイ・バンコクを拠点にマンガ・イラストの制作をしている。他にも、シンガポールやベトナムのイベントに、マンガ風似顔絵ブースで参加をするなど、マンガを通してさまざまな人達と交流していきたいと活動を広げている。
参考文献
公益社団法人 国民健康保険中央会「出産費用」
https://www.kokuho.or.jp/statistics/birth/ (最終閲覧:2023.04.30)
全国健康保険協会「出産に関する給付」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31712/1948-273 (最終閲覧:2023.04.30)
全国健康保険協会「出産育児一時金について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r310 (最終閲覧:2023.04.30)
厚生労働省「平成23年4月以降の出産育児一時金制度について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000075020.pdf (最終閲覧:2023.04.30)